しばらく出ていない数字を見ると、こう思いませんか。
「そろそろ来るはずだ」
この考えには、ちゃんとした理屈があるように見えます。大数の法則——回数を重ねれば、結果は平均に近づいていく。学校で習った人も多いはずです。
出ていない数字は平均より下にいる。ならば平均に戻るために、これから多めに出るのでは。
この理屈、半分は正しくて、半分は逆です。
全689回のデータで確かめました。
・大数の法則が本当に言っていること(そして言っていないこと)
・平均に近づくのは「取り返すから」ではない、本当の理由
・前半で出遅れた5個の数字が、後半でどうなったか
・「平均への回帰」「中心極限定理」の正しい使いどころ
この記事では、ずっと同じことをしています。
① 理屈のとおりならこうなるはず、を書き出す
② 実際のデータで確かめる
むずかしい言葉は「🔍もう少し詳しく」の囲みにまとめました。読み飛ばしても本文は通じます。
まず、大数の法則そのものはまぎれもない事実です。回数を重ねれば結果は平均に近づきます。
問題は「何が」近づくのかです。
近づくのは割合であって、回数ではありません。
ここがすべての誤解の出発点です。実際のロト7で見てみましょう。
| 抽選回数 | 最多と最少の 回数の差 | 最多と最少の 割合の差 |
|---|---|---|
| 100回 | 16回 | 2.29% |
| 300回 | 28回 | 1.33% |
| 500回 | 41回 | 1.17% |
| 689回 | 41回 | 0.85% |
2つの列を見比べてください。
回数の差は、縮むどころか広がっています。
大数の法則が言っているのは右の列だけです。左の列については、何も約束していません。
ここが腑に落ちると、すべてがつながります。コイン投げで考えてみます。
まず100回投げて、表が60回出たとします。平均は50回なので、10回の出すぎです。割合は60%。
そのあと900回投げて、今度はぴったり450回、表が出たとします。まったく偏りなしです。
合計1,000回でどうなるか。
| 表の回数 | 平均との差 | 割合 | |
|---|---|---|---|
| 最初の100回 | 60回 | +10回 | 60% |
| 合計1,000回 | 510回 | +10回のまま | 51% |
出すぎた10回は、1回も減っていません。
それなのに割合は60%から51%へ、平均の50%に近づきました。
理由は単純です。後の900回が「普通」だったので、最初の偏りが全体の中で薄まっただけです。
誰も取り返していません。借金は返済されず、ただ資産が増えて目立たなくなった——それが大数の法則の正体です。
理屈はわかりました。ロト7の実データで確かめます。
689回を前半344回と後半345回に割りました。そして前半でいちばん出遅れていた5個を選び、後半でどうなったかを追いかけます。
もし「取り返す」なら、後半では平均より多く出るはずです。
| 数字 | 前半の不足 | 後半の結果 | 取り返した? |
|---|---|---|---|
| 33番 | −13.1回 | −1.3回 | いいえ |
| 37番 | −13.1回 | −3.3回 | いいえ |
| 25番 | −12.1回 | −7.3回 | いいえ |
| 5番 | −10.1回 | −4.3回 | いいえ |
| 12番 | −10.1回 | −0.3回 | いいえ |
「後半の結果」は、後半345回の平均と比べた過不足です。プラスなら取り返したことになります。
1個も取り返しませんでした。
それどころか5個すべてが、後半でも平均以下だったのです。
いちばん出ていない25番を、最初から最後まで追跡しました。
| 時点 | 25番の回数 | 平均 | 不足 |
|---|---|---|---|
| 100回 | 16回 | 18.9回 | −2.9回 |
| 300回 | 46回 | 56.8回 | −10.8回 |
| 500回 | 79回 | 94.6回 | −15.6回 |
| 689回 | 111回 | 130.4回 | −19.4回 |
不足は縮まるどころか、−2.9回から−19.4回へ広がり続けました。
「そろそろ来る」は、689回のあいだ一度も起きませんでした。
この誤解には「ギャンブラーの誤謬」という名前がついています。1913年、モナコのカジノでルーレットの黒が26回続いたとき、「次こそ赤だ」と赤に賭け続けた客が大損した話が有名です。ボールには、それまで何が出たかを覚える仕組みがありません。
もうひとつよく持ち出されるのが平均への回帰です。これも本物の現象です。
ただし意味はこうです。
正しい意味:極端な結果が出たあと、次の結果は普通の水準に戻りやすい
よくある誤解:極端な結果が出たあと、反対方向に振れて埋め合わせる
背の高い父親の子は、父親ほどは高くならない傾向があります。これが平均への回帰です。
でも「父親が高すぎたぶん、子は平均より低くなる」わけではありません。ただ普通の身長に近づくだけです。
ロト7も同じです。ある数字がしばらく出すぎたとしても、次から出るペースが普通に戻るだけ。出すぎたぶんを減らして帳尻を合わせることはありません。
戻るのはこれからのペースであって、過去の帳尻ではないのです。
3つめが中心極限定理です。「たくさんの結果を集めて平均をとると、その散らばりが釣鐘の形になる」という定理です。
これは次に何が出るかについて、何ひとつ言っていません。
ただし——使いどころはあります。
「この偏りは、普通に起きる範囲なのか」を判断するときです。実はこの記事でも使っています。
25番が19回も足りない。それは異常なのか、それとも普通に起きることなのか。この判断ができるのは中心極限定理のおかげです。
答えは「普通に起きる範囲」でした。
つまり中心極限定理は予想する道具ではなく、確かめる道具です。
ここまでの話をまとめると、こうなります。
出遅れた数字が取り返すこともなければ、出すぎた数字が減ることもありません。
別の記事で「よく出ている数字は、これからも出やすいのか」も検証しました。答えは同じくノーでした。前半で4番目によく出ていた28番は、後半で37個中の最下位になっています。
上も下も、次の抽選には関係ない。それがロト7です。
ロトボットの予想アプリでは、37個を25個に絞り込む計算に「出遅れているから」という理由を入れていません。この記事のとおり、効果が確認できないからです。
アプリの画面には「⏰ そろそろ出る数字」という表示があります。これは各数字が何回ぶん待っているかを見せているだけで、絞り込みには使っていません。参考として見るものとお考えください。
使えるのは選ぶ手がかりを作ることと、当たったときに山分けする人数を減らしやすくすること。この2つだけです。どちらも当たる確率は変えません。
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